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京都地方裁判所 昭和45年(ワ)1736号 判決

原告

株式会社 日証

右代表者

高室直夫

右訴訟代理人

黒田喜蔵

黒田登喜彦

被告

永本大三外二名

右三名訴訟代理人

酒見哲郎

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

一  当事者の求めた裁判

1  原告

被告らは各自原告に対し金五五五万二、〇〇〇円を支払え。

訴訟費用は被告らの負担とする。

仮執行の宣言。

2  被告ら

主文同旨。

二  当事者の主張

1  請求原因

(一)  原告は、現に、別紙目録記載の約束手形一〇通の所持人である。

(二)  本件手形一〇通は、所持人によつて、支払期日((1)、(2)の手形は支払期日の翌日)に、支払場所に呈示されたが、支払を拒絶された。

(三)  被告らは、「いちふじ」なる名称の民法上の組合を結成し、被告ら各自製造の帯を共同して販売する事業を営んでいた。

(四)  右組合の代表者平井普が本件(1)の手形の第二裏書および本件(2)ないし(10)の手形の第一裏書をした。

(五)  よつて、原告は、被告らに対し各自本件手形金金合計金六九四万円から本件手形振出人の破産管財人支払済の金一三八万八、〇〇〇円を控除した残金五五五万二、〇〇〇円の支払を求める。

2  請求原因に対する認否

請求原因(一)、(二)は認める。(三)の「いちふじ」なる名称使用の点は争う。被告らは「一富士」なる名称の組合を結成した。(四)は争う。

三  証拠〈省略〉

理由

一左記(一)、(二)の事実は被告らの認めるところである。

(一)  原告は、現に、別紙目録記載の約束手形一〇通の所持人である。

(二)  本件手形一〇通は、所持人によつて、支払期日((1)、(2)の手形は支払期目の翌日)に、支払場所に呈示されたが、支払を拒絶された。

二本件(2)ないし(10)の手形の受取人「いちふじ」と第一裏書人「いちふじ平井普」との間に裏書の連続を肯定するのが相当である。

三民法上の組合の代表ないし代理権限を持つ者が、組合のために、その組合代表者ないし代理人名義で手形裏書をした場合には、同組合の組合員は、共同裏書人として、同手形について合同してその責を負うものと解するのが相当である(最高裁判所昭和三六年七月三一日第二小法廷判決、民集一五巻七号一九八二頁参照)。

四証人平井普の証言によれば、被告らが、「一富士」ないし「いちふじ」なる名称の民法上の組合を結成し、被告ら各自製造の帯を共同して販売する事業を営んでいた事実を認めうる。

五本件(2)ないし(10)の手形のように、

「受取人 いちふじ(ペン書き)

第一裏書人 いちふじ 平井普(ペン書き、名下に平井の丸印押捺)」

と記載されている場合、第一裏書は、民法上の組合「いちふじ」(被告らが組合員)のためにする旨(代表ないし代理関係)の表示があるものと解するのが相当である。

六本件(1)の手形のように、

「第一裏書)(白地式)

第二裏書人 いちふじ 平井普(ペン書き、名下に平井の丸印押捺)」

と記載されている場合、手形上の記載からは、第一裏書は、民法上の組合「いちふじ」のためにする旨(代表ないし代理関関係)の表示があるとも、ないとも解しうる場合に該当するから、手形所持人は、右代表ないし代理関係の表示があるものとして、(右代表ないし代理権限を持つ者が右裏書をしたことを証明して)「いちふじ」の組合員に対して本件(1)の手形金の請求をすることができる(最高裁判所昭和四七年二月一〇日第一小法廷判決、民集二六巻一号一七頁参照)。

七証人平井普の証言によれば、民法上の組合「いちふじ」の被用者である平井普が、本件(1)の手形の第二裏書および本件(2)ないし(10)の手形の第一裏書をした事実を認めうる。しかし、平井普が民法上の組合「いちふじ」のために右裏書をする代表ないし代理権限を持つていたとの原告主張事実に一部符合する証人松原典男、同小林博太郎、同野村喬の各証言は、証人平井普の証言、被告永本大三の供述に照し、採用し難く、他に右事実を認めうる証拠はない。

八よつて、原告の本訴請求を失当として棄却し、民事訴訟法第八九条を適用し主文のとおり判決する。(小西勝)

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